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彼女からの電話

彼女からの電話


昨晩、飲みすぎたせいか、どうやら寝過ぎてしまったようだ。
しかし今日は代休で休み。
人が働いてるときに休みなんてちょっとした優越感を感じながら、
重たいまぶたをこすりテレビをつけた。

テレビに目を向けると、司会者と観客の

「それではそろそろお友達を

「え~」

といつものやりとりが行われていた。

「さて今日は何をしようかな

と独り言をつぶやいたときに不意に携帯が鳴る。どうやら彼女からの電話のようだ。

「もしもし

「あ、おはよう。今日、行きたいところがあるから、一緒に行ってもらっても良い?」

そう言えば、前にもラーメン屋に1人で入るのが恥ずかしいとか言って付きあわされたっけ。
その日は特に予定も無かったので、二つ返事でOKした。

「ありがとう。じゃあ、今晩部屋まで迎えに行くから待っててね」

そう言うと彼女は電話を切った。
しかし酷い二日酔いだ。先程起きたばかりだが、耐えきれず俺は再び横になった。

誰かが喋ってる声で目が覚める。どうやらテレビを点けたまま眠ってしまっていたようだ。
テレビでは午後のワイドショーがやっていた。その番組を見た途端に眠気が一気に吹き飛んだ。
どうやら今朝に大規模な列車事故があったようだ。しかも俺がいつも利用している路線だ。

「もし今日、休みでなかったら巻きこまれていたのでは

そう考えたら背中がゾッとする。テレビでは犠牲者の名前が読み上げられていた。
そして1人の名前を聞いたとき、全身の血が凍るような感覚を受けた。
彼女の名前がそこにあったのだ。

ひょっとしたら同姓同名かも。
俺は祈る様な気持ちで彼女の携帯に電話をかける。だが無情にも

「おかけになった電話番号は、現在電波の届かない場所にあるか

何度も何度もかけても彼女の携帯には繋がらない。全身に絶望が襲いかかる。
そんなときに携帯が鳴る。

「彼女からだ!」

俺は慌てて携帯に出る。しかし電話の向こうは彼女の妹だった。

……もしもし……姉さん……死んじゃった……
一番被害が酷かった一両目に乗ってたらしくて即死だったって……。」

その後、電話を切った俺は放心状態でしばらく動けなかった。
しかし冷静になるにつれ、彼女のことで頭が一杯になる。

昨日まであんなに元気だったのに。今日電話で話したのに。
今晩一緒に出かける約束をしたのに。

膝から崩れ落ちると、俺はたまらず号泣した。










【解説】
事故があったのは今朝。
しかし彼は、番組の友だち紹介のコーナーのときに起床している。
番組は昼からで、コーナーは遅くとも1230過ぎ。
つまり彼女から電話があり、約束をしたのは午後ということになる。
今朝死んだはずの彼女は、今晩、彼をどこに連れていくというのだろうか。

 

大石(まあ、圭一君の傷害事件は事故ということで解決しそうですな。)

さとこ(に~には?)

魅音(で詩音、悟史に見せるように言ってどうなったの?走って逃げちゃったの?)

詩音(照れてる感じはしたけど、走って逃げるようなことはなかったよ。

その後ドライブして私の運転がうまくなったのを見せた後で突然、叫び出して走っていってしまったの・・・。)

大石(まあ、車の件は厳重注意ということにして、現場を見せてもらえませんか?)

俺たちは悟史の失踪場所まで移動した。 人気ブログランキングへ
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